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第5章 お酒のない生活をするために
② アルコール依存症で使える社会資源・制度
断酒を継続するためには、再飲酒に対しての対策を立てながら、規則正しいスケジュールが決められた生活を送ることが大切です。せっかく治療を受けても、退院後に特に何も予定がない、仕事をぼちぼち探していく、という生活は最もリスクが高いと言えます。
断酒を支え、回復のために利用できる社会資源や医療・福祉制度についてご紹介します。
医療の中でリハビリしたい
これらは「医療・福祉制度」で説明してある「自立支援医療」の対象になります。
デイケア
アルコール依存症を対象にした「アルコールデイケア」がおすすめです。
通院先と利用するデイケアは同じ病院の必要がある場合がほとんどです。昼食の提供も受けられ、1日のプログラムになります。プログラムの内容はデイケアによって、さまざまです。
外来OT
作業療法(OT)で、デイケアが丸1日なのに対し、2時間程度の短いプログラムになります。デイケアではさまざまなプログラムが1日を通して用意されていますが、OTは目的や好みにあったプログラムを選んで、その時間だけ利用する形になります。
精神科訪問看護
外に出ることが難しかったり、自宅に様子を見に来てほしい、という場合には精神科訪問看護がおすすめです。
看護師や精神保健福祉士が、身体の様子や服薬の状況を見てくれたり、日々の生活上の相談にのってくれます。外来主治医の指示が必要なので、主治医にご相談ください。
地域でリハビリしたい
障害者総合支援法による回復施設
地域活動支援センター
自立訓練(生活訓練)事業所
就労継続支援B型事業所
・・・などがあります。それぞれ、特徴やプログラムが異なります。
どこが自分に一番合っているのか、見学をしたり、体験利用をして決めるとよいでしょう。
お住いの地域にどのような回復施設があるのか、利用するにはどのようにしたらよいのかは、住所地の役所の障害福祉課におたずねください。利用には収入に応じて費用がかかる場合があります。
最近では、就労に特化した、株式会社が運営する就労支援センターも多く見られるようになりました。
MAC(マック)、DARC(ダルク)
MACは、アルコール依存症から回復したカトリック・メリノール宣教会の米国人神父によって、当時の埼玉県大宮市にアルコール依存症者のための治療共同体「大宮ハウス」が創設されたことから始まり、メリノール・アルコール・センターと呼ばれて広まっていったものを、頭文字を取ってMAC(マック)と呼ぶようになり、現在では全国各地に広まって依存症者の回復の手助けをしています。スタッフはほとんどが依存症からの回復者です。
DARC(ダルク)はドラッグ・アディクション・リハビリテーション・センターの頭文字を取ったもので、こちらも全国にあります。薬物依存症が中心ですが、アルコールや他の依存症でも利用することが可能な場合があります。
法的には上記の障害者総合支援法の枠組みのものもあります。利用については直接、お問い合わせされるか、住所地の役所の障害福祉課へおたずねください。利用には収入に応じて費用がかかる場合があります。
ナイトケア、宿泊型、グループホーム、などの呼称で、住まいながら支援が受けられる住居を備えたサービスを提供しているところもあります。自宅での断酒が難しい場合、このようなホームに住みながら断酒を目指すこともおすすめです。
医療・福祉制度について
自立支援医療(精神通院医療)
自立支援医療(精神通院医療)は、精神疾患のために精神科通院を続ける必要がある病状の方に、通院のための医療費の自己負担を軽減する制度です。アルコール依存症も利用することが可能です。外来、外来での投薬、デイケア、訪問看護などの利用が対象となります。
通常、3割負担の自己負担額が1割負担になり、なおかつ、1か月あたりの上限額が収入に応じて定められています。この上限額は2,500円から20,000円まで幅があり、納付している市町村民税の額で異なります。申請書と医師の診断書が必要になります。まずはかかりつけの精神科へご相談ください。
精神障害者保健福祉手帳
アルコール依存症の方が「精神障害保健福祉手帳」を受けるには、半年以上、断酒していることが要件になります。また、初めてアルコール依存症の治療を受けた日から6ヵ月を経過していないと申請ができません。窓口は住所地の障害福祉課になります。
受けられるサービスは次の通りです。(等級によって受けられるサービスの範囲が異なります)
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障害者総合支援法に基づく各種福祉サービス
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税金の控除などの優遇措置
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生活保護の障害者加算
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負担軽減サービス(NHKや携帯電話料金の減免)
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企業の障害者枠での雇用
また、自治体によっては公営・民営交通の割引や無料化、公営住宅の家賃減免や優先入居、また、映画館や美術館など割引などが受けられることもありますので、詳しくは各自治体の窓口にお問い合わせください。
これ以外にも、高齢者の場合には介護保険制度を利用が適切な場合があります。
また、一人暮らしの方は、規則正しく3食とる、ということが困難な場合もあるかもしれません。抗酒剤や別の疾患で服薬の必要がある方は、忘れずに飲むことが重要になります。さまざまなサービスを組み合わせて上手に生活することが必要です。このようなご相談についても、精神保健福祉士が「お酒のなやみなんでも相談電話」でお答えしておりますので、ぜひご利用ください。