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第1章 アルコール依存症ってどんな病気?
④ 病的な飲み方と行動パターン
毎日、晩酌をしている人は多いかと思います。
「毎日飲んでいないからアルコール依存症ではないと思う」というご本人やご家族もおられますが、「毎日欠かさず飲む」ことが依存症の定義なのでしょうか?
ではどういう飲み方が病的で、どこまでは正常なのでしょうか?
アルコール依存症は「脳の病」であると同時に「行動の病」とも言われます。
ここでは、飲み方と行動のパターンからアルコール依存症を見ていきます。
強化されたアルコール探索行動
依存性物質(アルコール)を摂取し続けるための工夫や努力のことを、「探索行動」と言い、これは「精神依存」(その薬物なしではいられない状態)が形成されていることを意味します。
飲み続けるための、ありとあらゆる努力を指します。
例えば・・・
・飲んでいるのに飲んでいないと見え透いた嘘をつく
・飲んだ言い訳をする(「付き合いがあるから仕方ない」など)
・飲酒を止めようとする家族に暴力・暴言
・家族の財布のお金をくすねて酒を買う
・家族に見つからないように家から遠くの店で酒を買う
・人から借金をして酒を買う(家が一軒建つくらいの借金をした人も)
・小遣い制限をされたので万引きして酒を飲む
・小遣い制限をされたので自分の本や服を売って酒を飲む
・トイレのタンクに缶ビールを隠しておく(庭の植木鉢の陰、なども)
・水筒にうつしかえてお茶のふりをして飲む
・料理酒や消毒用エタノールをジュースで割って飲む
・・・いかがでしょうか。涙ぐましいまでの努力でお酒を摂取しようとしているのがわかります。
アルコール依存症で入院中の患者さんが、食事で出されたパンとリンゴを発酵させてお酒を作っていた、なんていう武勇伝のような話も聞きます。
他にも、酔って転倒し、骨折した方が、松葉杖をつきながら、大雪の中、お酒を買いに行った・・・などという話も。このような例は枚挙にいとまがありません。
「嘘つき」だとか「家族よりお酒が大事」なのではなく、脳から出される強迫的な指令により、このような行動に至っているのです。この「精神依存」について、詳しくは「③ 脳のメカニズム」をご参照ください。
強化されたアルコール摂取行動
お酒の飲み方には4つのパターンがあります。
どこまでが正常で、どこからが病的なのでしょうか?
A型
機会飲酒
宴会やお祝いのときなど、普段は飲まないが。特別なときだけ飲む。
B型
習慣飲酒
晩酌や仕事帰りなど、1日のうち、決まった時間にほぼ毎日飲む。
C型
少量分散飲酒
仕事や家事の合間など、1人で日常生活の合間に少量を繰り返し飲むことが2日以上続く。
「キッチンドリンカー」などはこのタイプ。
D型
持続深酩酊飲酒
(じぞくしんめいていいんしゅ)
1人で飲んでは眠り、冷めては飲む状態が2日以上続く。いわゆる、「連続飲酒発作」と呼ばれるもの。
このうち、C型、D型がアルコール依存症の飲み方です。
どちらも「1人で」という言葉が入っているところに注目してください。
誰かと一緒に飲んでいればアルコール依存症にならない、ということではありませんが、多くの依存症者が1人で飲むようになっていきます。
C型は、以前に「キッチンドリンカー」という名前で、主婦が家事の合間に飲んだり、家事をしながら飲んだりするうちに依存症になるということで話題になった飲み方です。これは特に女性に限ったことではなく、自営業の男性など、比較的、自由に仕事ができる方に多く見られます。お酒がガソリンの役割を果たし、飲んだ方が馬力が上がり、がんばれるような気がするのですが、しだいに、お酒を飲まないと普通の気分でいられないようになっていきます。もちろん、パフォーマンスも低下していきます。
また、D型と断酒を繰り返す「山型飲酒サイクル」というものもあります。連続飲酒がつづいたのち、体がしんどくなってしばらく断酒するのですが、また飲みだすとすぐに連続飲酒になるパターンです。これを山型に繰り返します。D型は食事もとらずに飲み続けることもあり、命に関わることがあるので注意が必要です。
ビンジドリンクについて
「毎日は飲まないけれど、飲むときは大量に飲む」という方もいるかと思います。これを「ビンジドリンク」と言います。日本では、はっきりと決まった定義はありませんが、「 短時間に大量に飲酒すること」で、 WHOでは「heavy episodic drinking(大量機会飲酒)」を、1回 60グラム(ビールならロング缶3本、日本酒なら3合に相当)以上の飲酒を30日に1回以上する飲酒と定義しています。アメリカでは、さらにこれを「2時間以内」に摂取した場合と定義しています。
ビンジドリンクがイコール、アルコール依存症ということではありませんが、このような大量飲酒を続けることで依存症になっていくので注意が必要です。また、怪我などのリスクも高くなると言われています。
休肝日を設けていれば、どんな飲み方をしていても大丈夫、ではないということを知ってください。