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第6章 介入(インタベンション)について
① 治療につなげる
アルコール依存症は「否認の病」と言われるように、病識(自分が病気であるという自覚)が持ちにくいことが特徴の病気です。そのため、家族や周囲が困り果てているのに本人は酒を飲み続ける、ということが起こります。
このように本人が病気を認めず、治療を受けたがらない場合にはどうしたらよいのでしょうか。これには「介入(インタベンション)」と呼ばれる方法があります。
介入(インタベンション)とは
介入(インタベンション)とは、アルコールや薬物に依存している人に、できるだけ受け入れやすい方法で現実(飲酒や服薬によって実際に何がどうなってしまっているのか)を知らせていく方法のことです。
アルコールに依存している人は、自分が飲酒した結果、どんなことが起こっているのかを正確に認識したり、思い出したりできなくなっています。自分で正確に思い出せないのなら、誰かから教えてもらう必要があります。その時に大切なことは、どのような方法で教えてもらうか、なのです。
なぜ介入が必要なのか?
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アルコール依存の問題は、放置しておくと確実に進行する。
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アルコール依存の問題の進行に伴い、健康被害、犯罪、家庭崩壊、失業などの問題が併せて出現する。
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「否認の構造」が伴うので、本人の「底つき体験」を待っていては手遅れになる。
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周囲に「効果的なイネイブラー」が多いため、問題の進行が早い。
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周囲の働きかけが感情的にされることが多いため、かえって本人の否認のメカニズムを強めてしまう。
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一般的、常識的な助言や援助は、アルコール依存問題には役に立たない。
介入のための基本的な態度
1 深く、誠実な関心を示すこと
2 非難したり攻撃的な態度をとらないこと
3 正直にかかわること
介入のゴール
インタベンションのゴールは、アルコールに依存している人の否認の構造を理解・洞察し、治療や援助の場につなげること。
介入(インタベンション)の方法
介入は、最初に治療につなげるために本人に対してのみ行われるものではありません。必要に応じて、何度でも行われます。
また、本人ではなく、まず家族に介入することもあります。
入院治療をはじめたものの、途中で退院しようとする本人に対して、また、退院後に再飲酒したときなど、その都度、介入が行われます。
介入の流れ
ある人の飲酒問題で困った人が相談にやってくる
家族が先に相談に来ることがほとんどです。
家族構成や会社での状況、友人関係などについて確認します。
起きている問題について、飲酒以外の要因はないのかも探ります。
これまでの関わりについて確認
飲酒状況や問題行動に対して、誰が、どのような関わりをしてきたのか聞き取ります。関係する人ひとりひとりが、本人にどのような感情を持っているのか、アルコール依存症についてどのように理解しているのかを確認します。これまでの対応がなぜうまくいかなかったのかについても考えます。
重要な関係者のチーム作り
関係者の中にある、本人に対してのポジティブな感情を思い出してもらい、サポートします。家族の中の誰を中心にするのか、本人に対して影響力がある他者(会社の上司、親戚の人など)はいないかを探ります。本人と同じようにアルコールに問題がある人や、本人に感情的になってしまう人をチームに入れることは適切ではありません。
関係者へのアルコール教育
チームのメンバーに正しくアルコール依存症を理解してもらうための勉強会を行います。また、介入の必要性や意味についても理解してもらうようにします。
リハーサル
本人の飲酒問題で起こった重大な出来事をリストアップしてもらいます。
本人に対して攻撃的にならないように、あたたかい介入を目指して気持ちをひとつにまとめます。チームのメンバー全員が、アルコール依存症という病気や、介入の意味について正しく理解しているか確認します。リーダーを決め、当日、話す順番や、本人の抵抗があった場合の対応についてロールプレイをして練習します。
治療を受け入れた場合に本人が得られるサポートと、受け入れなかった場合の対応について決めておきます。
本人を入れた介入(本番)
最初に「この集まりはあなたを裁いたり責めたりする性格のものではなく、あなたを大切に思っている人たちがここに集まっていること」を説明します。
参加者が順番に、具体的事実(飲酒により起きたこと)と気持ち(悲しかった、辛かったなど)、希望(治療を受けてほしい)を述べます。
本人が抵抗を示したら、「とにかく最後まで話を聞いてくださいませんか」と伝える。治療を受けることを渋ったら、不安な点を聞いて回答します。
うまくいった場合、いかなかった場合
治療することを受け入れたら、みんなでその決断を祝福し、喜びあいます。このとき、すでに専門機関の予約がされており、すぐに受診させられるように準備しておくことが重要です。
治療を拒否した場合には、考え直すための猶予期間を与えた上で、それでも気持ちが変わらなければ最終結論(退職、別居、離婚、経済的支援の打ち切り、など)が出てしまうことを伝えます。この最終結論は脅しではなく実行できるものにしましょう。