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第3章 ご家族の方へ
③ イネイブリングと共依存
なぜ、あの人は仕事もやめてしまったのに、お酒を飲み続けることができているのでしょうか?
なぜ、あの人は夜中に酔って帰ってきて、スーツも汚れ、かばんも失くし、タクシー代も払えなかったのに、ちゃんと今日は整った姿で出勤できたのでしょうか?
依存症者のそばには、依存行動を可能にする「支え手」がいると言われます。
もちろん、この「支え手」は、本人が健康に生活できるように、ちゃんと会社に行けるように、そう思って「本人を」支えているつもりなのですが、事態は一向に良くならず、病気が進行していくことがあります。
この「支え手」のことやその行動を、「イネイブリング」「共依存」と言います。
「イネイブリング」と「共依存」というのは似た言葉ですが、それぞれ意味が異なるので、一つずつ解説していきましょう。
イネイブリングとは
依存症などの問題行動を起こす人のそばには、その問題行動を続けることを可能にする人がいると言われています。家族は、本人が飲酒して困った結末を抱えているのを見て、愛情からなんとかしてあげようとします。愛情ではなく、なんとかしないと家族が迷惑するから、という場合もあるかもしれません。つまり、本人の責任の肩代わりをするわけです。すると本人は責任を取らずに済み、痛みを感じません。こうやって痛みを感じずに済んだ本人は、飲酒を継続することになります。
本人を助けているつもりが、本人の飲酒(病気)を助けてしまう行動、これを「イネイブリング」と言います。そして、この行動をとる人を「イネイブラー」(支え手、可能ならしめる人)と言います。
共依存とは
共依存とは、英語で「codependence(codependency)」と言います。「dependence(dependency)」とは依存症(者)の意で「co」は接頭語で仲間、一緒、同じ、共に、などの意味があります。つまり、依存症者の仲間、ということです。病気の本人と生活していると、家族は本人と同じように、病気の影響をもろに受けます。家族は飲酒していないくても、依存症の本人と同じような考え方、感情、行動をするようになります。
「依存症者などの、問題のある、病的な行動に対応する中で身につけた不適切な考え方と行動であり、習慣化するもの」と定義することができるでしょう。この「不適切な考え方と行動」とは、「ある人の、問題のある、病的な行動を何とかするのが自分の責任であり(考え方)、自分には何とかできる(行動)と思い違いをすること」というもので、共依存の特徴です。
共依存も依存症の一つですから、依存症と同じように進行していきます。
耐性が上昇(異常な日々にだんだん慣れてくる)
受け入れがたい行動にも耐えられるようになる
依存症者のことで頭がいっぱい、頭から離れない
うわべだけを取り繕うようになる
生活のあらゆる面でさらに事態が悪化する
ストレスが身体症状となって現われる
依存症者の母親のようになり尻拭いをしたり、操ろうとする
感情を押し殺し、ひきこもり、依存症者への非難を自分がかぶる
依存症者が引き起こした不祥事を矮小化する
自分自身を見失う
依存症者のことしか考えられない
生活のあらゆる面が壊滅的局面を迎える
逃避する、自殺する
イネイブリングと共依存の行動をやめるために
1 頼まれていないことはしない
2 したくないことはしない
3 今それをやることで、後々、恨みや怒りを感じるようなことはしない
4 哀れみから人に何かをしない
5 相手から期待されていると感じるからといって、それをしない
共依存もイネイブリングも長い時間をかけて形成されてきたものですから、すぐに変えることはできません。気づいたところがスタート地点です。それだけでも素晴らしい、大きな変化です。習慣の力は強く、すぐに引き戻されそうになりますが、変えることは可能です。まずは専門機関に相談に行くこと。そして、病気についての知識を得ること。それから仲間(家族会など)を得ることです。
※ 共依存とイネイブリングについては「共依存から抜け出すワーク」で学ぶことができます。